皆様
こんにちは。
杉山です。
第7クールあたりから、慈悲の瞑想をお伝えする回で
参加者の皆さまにもご紹介しているのですが、
私の趣味の1つで、TED TALKという番組を見るのが大好きで、
今日は、私の一押しのTED TALKを皆さんにも広くご紹介できれば、と思い記事を立ち上げます。
TED TALKというのは、アメリカで行われているスピーチの番組です。
一般の方から専門家まで、幅広く誰でも、自分がみんなにシェアしたいと思うことを
5~20分程度のスピーチでお話できる、という番組です。
ホームページでは、日本語の全訳や字幕付きで、スピーチを読んだり見たりすることもできます。
世界の最前線の研究を行っているような研究者や、一般の方でもとてもユニークな視点で体験を捉えている方の、すごく上手でおもしろいスピーチを見ることができます。
面白いことに、「マインドフルネス」や「慈悲」という言葉を直接使っていなくても
「これは、マインドフルネスの気づきに通ずるなぁ」
「これは、マインドフルネスの受容の力にすごく似ているぞ」
「自分に慈悲の心を向けるってこんな方法もあるよなぁ」などなど
あちこちで同じことをテーマにした話を、違う角度から聞くことができたりして
不思議だなぁ、やはりマインドフルネスは新しい力ではなくて、
いろいろなことに繋がっている1つの真理なのかなぁ、などと考えたりします。
これから少しずつ私のイチオシのスピーチを紹介していきますので、
もしも、時間があれば、皆さんも是非見てみて下さい!
ご紹介第4弾
ジャドソン・ブリューワー 「悪癖を止める簡単な方法」
Judson Brewer 「A simple way to break a bad habit」
https://www.ted.com/talks/judson_brewer_a_simple_way_to_break_a_bad_habit/transcript
海外のマインドフルネスの研究を行っていらっしゃる先生のスピーチです。
特に、「分かっちゃいるけれど止められない」悪癖を
どんな風に止めていくことができるか、
マインドフルネスを利用した方法をとても具体的に提案して下さっています。
スピーチの中で「報酬に基づく学習プロセス」の説明が出てきますが、
これは、オペラント学習という名前で呼ばれている学習の1つで、
認知行動療法(特に行動療法)の基本原則にもなっている学習プロセスです。
実は、個人的な話ですが、大学に入って
自分で自分を制御する方法を知りたいと思い、
「○○心理学」という名前の講義をたくさん受講してみたけれど、
いまいち具体的にどうしたら良いかが分からない中で、
この学習理論を学び、認知行動療法を学び、
こんなに具体的で明確な方法があるんだ!と衝撃を受けました。
これを知ったことで、ずいぶんと自分を上手に頑張らせてあげるコツが分かった気がします。
結局、自分に対するハードルを高く掲げすぎてしまっているんですよね。
理性や考えだけで、自分の行動をコントロールすることはとても難しくて、
「骨身に染みるレベル」で、体験でもって学ぶことと
少しずつ習慣を上書きしていくことが、とても大事だなぁと
スピーチを聞いて改めて思いました。
そしてそれを実現するためのたった1つのコツが、
自分自身に「好奇心を持つこと」なのですよね。
マインドフルネスを練習すると、
「え?本当は私はこんな体験をしてたの?」と思ってしまうような、
自分に対する体験的な理解と、本当にたくさん出会えることは、
皆さんもご存知だと思います。
スピーチでは、分かりやすい例えとして喫煙の問題が取り上げられていましたが、
思考の癖も含めて「分かっちゃいるけれど止められない」数々の悪癖に応用できると思います。
(グループのセッションでは4回目のあたりで、
自分の悪癖と向き合うワークに挑戦して頂いています。)
・つい、甘いものをつまんでしまう
・後悔するのに、怒鳴り散らしてしまう
・良くないと思いつつ、お酒を飲みすぎてしまう
・気づくと自分に厳しい言葉をかけている
・いつも先延ばしにしてしまう
・1日中未来の不安のことばかり心配している
・常に自分のダメなところを探してしまう
・考えないほうがいいと分かっているのに、やっぱり考えてしまう
などなど・・・。
どんな悪癖があってもOKです。
変えたければ必ず変えることができます(変えたくなければ変えなくてもいいのです)。
ただそれがそこにあることに気づきましょう。
そして「果たして自分はどんな体験をしているんだろう?」と、
思考、感情、身体の感覚、そして呼吸の様子を気にかけていきましょう!
ご紹介第3弾
ケリー・マクゴナガル 「ストレスを味方につける方法」
Kelly McGonigal 「How to make stress your friend」
https://www.ted.com/talks/kelly_mcgonigal_how_to_make_stress_your_friend/transcript
このスピーチは「衝撃!」の一言でした。
体験をどんなふうに受け止めるか、苦しい時に何に時間を費やすか
自分が選ぶ考えや行動によって、身体の反応までもを変えることができるなんて、
人間は本当にすごい生き物です。
私のところにご相談に来て下さる方々の中には、
身体のいろいろな反応を「敵視」してしまうという症状を持った方が
少なからずいらっしゃいます。
例えば、
・心臓がドキドキする感じが怖い、ドキドキしないでほしい
・胸のあたりが気持ち悪いのが嫌、そうなると横になる以外ない
・身体が重だるいせいで、何もできない
・緊張するとすぐにお腹が痛くなる、どうしてこんなに弱い身体に生まれてしまったのか…
などなど。
グループのセッションの中では、「呼吸と身体からのメッセージを聞く」という話をしていますが
頭から言葉で送られてくるメッセージに比べると
身体から送られてくるメッセージは曖昧で分かりにくくて、
専門知識や専用の機械がないと正しく理解できないこともあるのですが
でも、基本的に身体はいつもいつも私たちを「生かす」ために働いてくれています。
身体の反応には意味があって、「不要だ、邪魔だ」と判断しているのは
自分の思考がやっているだけのことなんですよね。
もっと身体のことを信じて頼りにして身体の言うことをちゃんと聞いてあげることが
心と身体の健康を守る上で一番大事なことかもしれないな、と思います。
さらに、個人的にこのスピーチから勇気をもらったのは、
「ストレス下にいる人に手を差し伸べることは、自分の中の回復力を作ってくれる」
「ストレス下にいる時に、人の助けを借りることで、自分の回復力もあがる」
という後半のお話の部分です。
まさに「情けは人のためならず」。
単なることわざではなく、科学で人への思いやりには自分の回復力を高めてくれる力があることが証明されているのですね!
そう考えると日本のことわざは真実を語っているんだなぁ~と感慨深く思いました。
自分が大変な時に「助けて下さい」とお願いすることも、
誰かが大変そうな時に「助けられることある?」と聞いてみることも
結構勇気がいて、チキンな私はなかなか行動するまで至らないで終わってしまうことも多いです。
でも、例えばちょっとごみを拾ってみたり、ちょっと募金してみたり
ちょっと友達や同僚に話を聞いてもらったり、自分にできる範囲でやってみよう!と思います。
そうすることで、自分もパワーアップして、
ついでに周りの人にも少しいいことがあれば一石二鳥ですしね(笑
「ストレスをなくそうとするのではなく、上手に付き合うことが大事」ということは
実は日本の文化の中では結構浸透している考え方なのかな、と思います。
でも、「上手に付き合う」の中に含まれている意味としては、
「ストレスを感じないのが一番だけど、それは無理だから、最小限になるように工夫する」とか
「ストレス発散やリラックスする時間をとって、ストレスを失くす方法を身に着ける」とか
やはり「ストレス=悪=なくす、減らす」というものが含まれているように思います。
(ストレスの部分を人に置き換えてみると、もっとはっきりと分かります。
「あの人がいないのが一番だけど、それは無理だから、なるべく会わないように工夫する」
「思いっきり愚痴を言ったり、あの人のことを考えない時間を作って、あの人を無視する方法を身に着ける」とか…結構ひどくない?
その「あの人」は、私のために働いていると言うのに…。)
しかし、私たちはもっと積極的に具体的にストレスと仲良くなれるのですね。
身体の声に耳を澄ませること、自分や人への思いやりを大切にすること
どちらも、今日、今すぐ始められることです。
まずは、今、この瞬間に自分の呼吸を感じることから、早速始めていきましょう。
ご紹介第2弾
ブレーネ・ブラウン 「心のもろさの力」
Brene Brown 「The power of vulnerability」
https://www.ted.com/talks/brene_brown_on_vulnerability
こちらのスピーチも自分の体験との触れ合い方について
非常に重要な示唆をくれるものです。
私が特に大事だなぁと思ったことは、
「人間は選択的に感情を麻痺させることはできません。…(省略)…だから、そうした気持ち(辛い気持ち)を麻痺させるとき、同時に喜びや感謝の意や幸福も同時に麻痺させてしまうのです。」
という部分です(日本語訳から抜粋しました)。
クールの中では、4回目のあたりで、「心の”反応”とそれに対する”対応”」というお話をしていて、
心の”反応”に気づいた時に、それについてDoingの心のモードだとよくしてしまう”対応”について
避ける、執着する、妄想する、の3つを紹介しています。
3つとも本当によく選択してしまう"対応”なのですが、中でも「避ける」というのは
私たちがしばしば選択しがちであり、一番気が付きにくいものかな、と個人的には感じます。
避けてないつもりが、避けてしまっていること本当に良くあるのですよね…。
ブレーネさんのスピーチの中では、それを「麻痺させる」という言葉で紹介してくれています。
本当にぴったりの表現だなぁと思います。
「麻痺」しているので、「麻痺」している最中は自分が感じていないことに気づけなくて、
「麻痺」が治った時に始めて、「あぁ、自分は今まで感じないようにしていたんだ。本当はこんなにも痛みを感じていたんだ。」と分かるのですよね。
すごいことに、私たちは麻痺させようと思えばいくらでも自分で自分を麻痺させることができます。
グループの中でも、最初にボディスキャンをすると「身体の感覚をさっぱり感じない」という方って実はたくさんいらっしゃいます。
または、嬉しい出来事日記や嫌な出来事日記をやっても、
「頭で何を考えていたかは書けても、身体で何を感じていたか、どんな気分だったかは書けない。」
という方も同じようにいます。
それでも、8週間かけて、少しずつ自分の体験に気を配ることを根気強く根気強く続けて頂くと
段々と感覚が戻ってきて、ちゃんと感じられるようになっていくので
自分でシャットアウトしていたり、頭で考えたことばかりに気をとられたりしていただけで、
本当はちゃんと感じる力はあったんだ、ということが段々と分かってくるんですよね。
痛い、辛い、苦しい、不安、落ち込む、焦る、怒る…などなど。
ネガティブな体験はもちろん誰にとっても「嫌」で、「嫌だ」と判断してしまうと
やはり「麻痺」させたくなってしまうのですが、
その”対応”を選択した時に、その中に隠れていた様々な喜びや幸せをも見失ってしまうのでしょう。
カウンセラーの仕事をしていると、他人の心の動きには本当によく気が付けるようになります。
「頭で考えた過去や未来にとらわれすぎて、今もう既に手にしている幸福に気づけず、感じられずにいる」
ということが、多くの疾患に共通しているパターンのようにも思えます。
そして、ということは、きっと私自身が苦しい時、同じことが起こっているんだろうな、と思います。
傷つきやすい自分やもろさを持った心を、好きになったり無理やりポジティブに考える必要はないけれど
ただそれは自分が生きているということの証でもあり、人生の一部であり、
自分というものを作り上げている不可欠な要素の1つである、という風に
「避け」ずに、「受容」することが出来たとき、
きっとさらに気づけることが多くあるのかもしれないですね!
「受容」の道には、根気強さが求められますが、
私も諦めずに、自分の出来る範囲で、少しずつ少しずつ体験との関係を変えられたらいいな、と思っています。
「受容」の心を理解するのに、このスピーチが役に立ってくれたらうれしいです。
ご紹介第1弾
ガイ・ウィンチ 「感情にも衛生が必要な理由」
Guy Winch 「Why we all need to practice emotional first aid」
https://www.ted.com/talks/guy_winch_the_case_for_emotional_hygiene/transcript
このスピーチは、クールの中でも何度かご紹介したことがあります。
自分に慈悲の心を…という話をした時に、私たち日本人にとって少し抵抗があるのが
「自分に優しくすることって、自分を甘やかすことになるんじゃないの?」
「自分で自分を思いやるなんて、自己中心的な感じがする。」
「何もかも許していてはダメ。厳しく自分を律しないと怠け者の自分はどこまでも怠けてしまう。」
などなどの、心の反応が生まれやすいのかな、と感じます。
日本人は、謙虚さを大事にする文化を持っていますから、
特に、自分のまだまだのところ、ダメなところを見つけるのは大得意だけれど
素晴らしいところや素敵なところ、好きなところを見つけるのは難しいという方が多いのかな、と思います。
かくいう私も、昔は自分のことがとても大嫌いで、
自分に優しい言葉をかけるなんていうことは、その必要性すら感じなくて
自分に厳しいことを言えば言う程、自分はよりよい人間になれるんだ、と信じていました。
そうやって自分では自分を追い込む癖に、人に評価されるとそれにはとても傷ついてしまって
そして簡単に傷つく自分をまた「弱い人間だ」と追い込んで、
さらに傷つきやすくなっていく…という悪循環を自分で作っていました。
心も体と同じように、メンテナンスが必要で、
傷ついた時には自分でそれを悪化させないために手当てをすることが大事で、
それは、自分を甘やかすということとは全然違うことなんだ、というのが
彼のスピーチを聞くととてもクリアに伝わってきます。
マインドフルネスは、ありとあらゆる自分の体験に気づき、
それを変えようとしないで受け入れる心の態度ですから、
自分の良いところ”だけ”を見るようにする、ということや、
自分のダメな所を無理やり良いものに変える、ということは、やはりアプローチが少し違います。
でも、良い自分もそうでない(と判断される)自分にも等しく平等に気づくことや
どんな体験をしている自分にも「OKを出す」ということには
自分に対する”優しい”目線が必要不可欠です。
どんなに不快に、苦痛に感じられる体験にも、気づいて
「そんな体験を今しているんだね」とそれらを受け入れるためには、
自分の体験に好奇心を持つことや、優しい見守る目線を向けてあげることが役に立ちます。
小さな子供が転んで泣き出した時に、「そんなことで泣くな!」と叱っても泣き止みはしません。
「どうしたの?どこがどんな風に痛いの?そっか、痛かったね。」と優しく聞いてあげれば、
その傷や痛みがすぐに消えるわけではないけれど、徐々にその子は泣き止んでいくでしょう。
私たちの心も同じなのかな、と感じます。
自分の心の傷に気づいた時、優しく手当をすることで、
その傷を真に「受け入れる」ことができるのです。
まずは自分の心の傷にしっかりと気づくところから、
最初は手当は下手かもしれませんが、少しずつ練習していけるといいですよね!